こんにちは。
司法書士の村田です。
今回は、不動産登記に関する新しい取扱いについてご紹介します。
令和8年10月5日から、不動産の所有権移転登記などを申請する際、新たに登記名義人となる方の「国籍等」を申請情報として提供することになりました。
相続登記や売買による所有権移転登記など、これまで作成していた登記申請書に新たな確認事項が加わることになります。
「国籍を書くようになるって、具体的にはどういうこと?」
「日本人の場合も国籍を書くの?」
「外国籍の方が不動産を取得する場合はどうなるの?」
今回は、司法書士の立場から、実務上のポイントを分かりやすく解説します。
1.令和8年10月5日から何が変わる?
法務省の案内によると、令和8年10月5日以降、所有権の移転登記などを申請する場合、新たに所有者となる方について「国籍等」を申請情報として提供することになります。
これまでも、外国人の方が所有権の登記名義人となる場合には、一定の場合にローマ字氏名などについて申請情報を提供する制度がありました。
今回の変更は、それとは別に、新たな所有者について国籍等を申請情報として提供する仕組みが導入されるというものです。
法務省は、この制度について、不動産の所有者に関する国籍情報を把握するための仕組みとして検討を進めてきたことを説明しています。
2.相続登記でも国籍等の申出が必要になります
今回の変更で、特に身近なのが「相続登記」です。
例えば、お父様が亡くなり、鳥取市内の土地・建物を長男が相続するケースを考えてみましょう。
これまでは、登記申請書に、
「登記権利者 鳥取市○○町○番○号 鳥取太郎」
といった形で、住所・氏名などを記載していました。
令和8年10月5日以降の申請では、これに加えて、新たに登記名義人となる相続人について国籍等を申請情報として提供することになります。
法務局も、10月5日以降に申請する相続登記について、申請書の様式・記載例を更新しています。
3.日本人なら「日本」と記載するの?
ここは実務上、気になるところだと思います。
今回の制度では「国籍等」を申請情報として提供することになります。
したがって、登記申請をする際には、登記名義人となる方について、国籍等の情報を確認した上で申請書を作成することになります。
司法書士は、相続登記などのご依頼をお受けする場合には、従来から本人確認や戸籍・住所などを確認していますが、今後は国籍等についても確認する場面が出てきます。
「日本人だから何もしなくていい」というのではなく、登記申請に必要な情報として司法書士が確認する事項が一つ増えると考えると分かりやすいと思います。
4.外国籍の方が不動産を取得する場合は?
外国籍の方が不動産の所有者となる場合には、今回の「国籍等」の申出に加えて、これまでから存在する外国人特有の登記上の取扱いにも注意が必要です。
例えば、令和6年4月1日以降、外国人が所有権の登記名義人となる場合には、原則としてローマ字氏名を申請情報として提供し、ローマ字氏名を証する情報を添付することとされています。
つまり、「国籍等を申請することになったから、外国人についてこれまで必要だった手続がなくなる」ということではありません。
外国籍の方については、住所証明情報、ローマ字氏名など、個別に確認しなければならない事項があります。
特に海外に居住している外国人が所有者となるケースでは、住所証明情報についても特別な取扱いがあります。
5.司法書士の実務では何が変わる?
司法書士からすると、今回の変更で重要なのは、
「申請書の項目が一つ増えた」
という単純な話だけではありません。
登記申請を受任するときに、
* 誰が新しい所有者になるのか
* その方の氏名・住所はどうなっているか
* 日本人なのか外国籍なのか
* 国籍等をどのように確認するか
* 外国籍の場合、ローマ字氏名などの確認が必要か
* 海外居住者の場合、国内連絡先などの確認が必要か
といった事項を、これまで以上に丁寧に確認する必要があります。
特に相続案件では、相続人が複数いることも珍しくありません。
例えば5人の相続人がいて、そのうち1人が海外在住、1人が外国籍というケースでは、登記申請に必要となる情報が複雑になる可能性があります。
こうした案件では、最初の段階で必要な情報を整理しておくことが重要です。
6.「国籍」は登記事項証明書に載るの?
ここも大切なポイントです。
今回提供する国籍情報について、法務省は、「不動産登記に関する内部情報として保有する」との説明をしています。
つまり、一般に取得する登記事項証明書に、これまでの住所・氏名などと同じように国籍がそのまま表示される、という制度ではありません。
「登記申請の際に国籍を提供する」
ことと、
「登記簿に国籍が記載される」
ことは同じではありません。
この点は誤解しやすいところなので、注意が必要です。
7.10月5日以降に相続登記を申請する方は注意
今回の変更は、令和8年10月5日以降に申請する登記が対象になります。
そのため、「相続が発生したのは以前だから関係ない」とは限りません。
例えば、
令和7年に父親が亡くなった
↓
令和8年10月に相続登記を申請する
というケースでは、申請時期が10月5日以降であれば、新しい取扱いを確認する必要があります。
8.司法書士にとっては「確認事項の増加」というより「事前確認の重要性」が増す
今回の変更について、実務家として私が感じるのは、
「登記申請書の記載事項が増えた」ということ以上に、「登記申請前の情報整理が重要になる」
ということです。
相続登記では、
「戸籍が全部そろっているから大丈夫」
と思っていても、
* 相続人の住所が違っている
* 海外在住者がいる
* 外国籍の相続人がいる
* 氏名の表記が複数ある
* 住所証明情報の取得が難しい
など、別の問題が出てくることがあります。
だからこそ、登記申請をする前に、
「誰が所有者になるのか」「その人について何を確認する必要があるのか」を整理することが大切です。
まとめ
令和8年10月5日から、不動産の所有権移転登記などについて、新たに登記名義人となる方の「国籍等」を申請情報として提供する取扱いが始まります。
相続登記をはじめ、不動産の所有権移転に関する登記を予定している方は、今後この点にも注意が必要です。
また、外国籍の方や海外にお住まいの方が関係する登記では、国籍等だけでなく、ローマ字氏名や住所証明情報、国内連絡先など、別途確認が必要となる場合があります。
登記は、申請書を作成して提出するだけに見えても、実際には事前の情報確認が非常に重要です。
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村田浩一